サンプリングとは、他の楽曲のフレーズを引用してループさせたりすることで、新たに楽曲を作る手法のことです。ダンスミュージック界、とりわけヒップ・ホップでは一般的な手法で、有名な楽曲をサンプリングする場合は「大ネタ使い」と言われます。
ディスコ関連で有名なのは、エリック・クラプトンらが結成したバンド「デレク・アンド・ザ・ドミノス」の代表的なロックミュージック「いとしのレイラ」をサンプリングした「ザ・ビーチ/アフリカ&ザ・ズールー・キングス」でしょうか。
ディスコサウンドとサンプリングは、やはり切っても切り離せない関係でしょう。
ディスコのサンプリング文化
1990 年代中期に、このように 70 ~ 80 年代のディスコ・サウンドをサンプリングした HOUSE ミュージックも多くありました。特に「SAVE A PRAYER/Duran Duran」をサンプリングした「SAVE IT TILL THE MORNING AFTER/Shut Up And Dance」や、「STREET PLAYER/Chicago」をサンプリングした「THE BOMB!/Kenny ‘Dope’ presents The Bucketheads」はU.K.チャートでも大ヒットしています。
さらに、1995 年には「Stayin’ Alive/Bee Gees」をダイレクトにサンプリングして話題になった「Stayin’ Alive/N-Trance feat.Ricardo Da Force」が U.K. チャート2位の大ヒットを記録し、かつてのディスコ・サウンドの名曲をそのまんま使う(ときにはオリジナルのボーカルまで使う)サンプリング・スタイルの楽曲が一大ブームとなります。
通常のサンプリングとは異なるのが「ディスコの楽曲に限定」「音を聞いただけですぐネタがわかるレベル」という直球ド真ん中・完全ミーハー仕様であること。このスタイルが受け、大量のクローンが出現。一大ジャンルを築き上げることになります。
このムーヴメントはディスコ系では「ネオ・ディスコ」というジャンルで呼ばれていました。
クラブでもこのジャンルがプレイされることが多かったのですが、「ディスコ」という言葉はダサいので敬遠され、主に「ヒップ・バッグ」などと呼ばれていました。
ネオ・ディスコな楽曲
ぼくはディスコおじさんなので「ネオ・ディスコ」というジャンル名は好きです。
ということで、ぼくが好きなネオ・ディスコ楽曲をご紹介しましょう!
Stayin’ Alive/N-Trance feat.Ricardo Da Force
この曲から始まったネオ・ディスコ症候群という一大ムーブメント。U.K.をはじめ日本でもヒットした「Set You Free」や「Turn Up The Power」など、従来のレイヴサウンドから一転し、ビージーズの「ステイン・アライブ」にラップを乗せた軽快なパーティーナンバーになっています。ラップはThe KFLでもラップを努めたリカルド・ダ・フォースが担当。
Night Fever/EX-IT
「ステイン・アライブ」がヒットしたなら、ナイト・フィーバーも売れるじゃん! と、恥も知らぬ露骨なパクリとして登場してきたEX-ITの「ナイト・フィーバー」。もちろん、ビージーズの大ヒット曲をサンプリングしたアレです。セカンドシングルの「Party」もダンスマニア系のCD中心に人気でした。
Da Ya Think I’m Sexy?/N-Trance feat.Rod Stewart
ステイン・アライブが世界中で大ヒットしてしまったため、従来のテクノ・レイブ路線からディスコものへと変化を辿ったN-Trance。このナンバーはタイトル通りロッド・スチュワートの名曲をサンプリングし、さらにサブではロッド本人のボーカルも使うという、まさに必殺チューン。邦題は「どおゃ、俺ってセクシー?」でした。
Kung Fu Fighting/Bus Stop feat.Carl Douglas
「Da Ya Think I’m Sexy?」と同じ路線で本人の声も使っちゃおうということで、カール・ダグラスのカンフー・ファイティングも登場。N-Tranceと同じレーベルメイトであり、売れたパターンは即模倣という清々しい売り方でした。Bus Stopは他にも「Jump」「Na-Na」「Footloose」などをヒットさせています。
Jump/Bus Stop
その名の通り、ロック界の大御所であるヴァン・ヘイレンが1984年に大ヒットさせた名曲「Jump」をネオ・ディスコ・スタイルでアレンジしたナンバー。こちらも様々な方面でヒットしました。あのメロディを聞いただけで自然とジャンプしてしまいます。
Let’s Get Down/JT Playaz
U.K.やヨーロッパ各国でヒットした「Just Playin’」でおなじみのアーティストですが、日本ではこちらの「Let’s Get Down」がヒットしました。ダンスマニアだけでなく、アーケードゲーム「ダンス・ダンス・レヴォリューション」にも収録されたことから幅広い層に支持されました。オリジナルはディスコ・ヒットとして外すことのできない1曲「Celebration/Kool & The Gang」です。
Celebration/Westcoast feat.Jon Martin
もう1曲「Celebration/Kool & The Gang」ネタのナンバーをご紹介。U.K.リリースのナンバーですが、アーティストもプロデューサーもまったくわからない謎のプロジェクト。わかるのがラップを担当しているのが「Sex On The Streets」や「Trippin’ On Sunshine」のヒットで知られる「Pizzaman」のラッパー「Jon Martin」ということだけですが、ポテンシャルの高いサウンドで隠れた名曲。当然、日本未発売。
Tarzan Boy/Lee R
ターザン・ボーイということで、さすがにフロアでは聞かなかったけど、個人的に好きなので一応。オリジナルはバルティモラが85年にリリースした異色のハイエナジー・ナンバー。流れると「うぉおおおうおーおおー!」と叫び声が上がりました。スゥエーデンでリリースされたものは普通に「Tarzan Boy/Lee R」という表記でしたが、台湾などアジアでリリースされたものは「Tarzan Boy ’98/Retroactive feat.Lee R」となっています。
Long Train Runnin’/Trance-Angel
ドゥービー・ブラザーズの超有名曲「ロング・トレイン・ランニン」を使用したネオ・ディスコ・ナンバー。同じようなカバーでは、上記の「Bus Stop」もやってますが、イタリア盤のこちらはF.C.F.などのユーロビート・プロデューサー「マウロ・ファリーナ」「ジュリアーノ・クリヴェレンテ」によって製作されており、クオリティは間違いないです。
Pop Rock Soul Funk Forever/Fresh ‘N’ Funky
「Take That to the Bank」や「I Can Make You Feel Good」などをヒットさせたシャラマーの名曲「A Night To Remember」を用いたドイツ産のネオ・ディスコ・トラック。ムーヴメントはU.K.のみならず、ヨーロッパ全土へと波及していました。
I’m Alive/Stretch & Vern Present “Maddog”
ネオ・ディスコ・ムーヴメントでこちらも外せない1曲。アース、ウィンド&ファイアの「ブギー・ワンダーランド」の大ネタ使いでU.K.で大ヒットしたナンバー。日本でもクラブで人気の高かった1曲です。ファット・ボーイ・スリムによるリミックスも人気でした。
Disco’s Revenge/Gusto
クラブプレイ・チャートで1位を記録したU.K.大ヒットナンバーながら、日本ではまったくウケなかったディスコ・チューン。「Groovin’ You/Harvey Mason」をサンプリングしたハウストラックにソウルフルなボーカルが絡み、全体的にクラブ向けのダークな仕上がり。「ボンボンボーン」とおなじみの重厚なベースに体が揺れます。
Inferno/Souvlaki
ディスコの超定番曲であるダン・ハートマンのリライト・マイ・ファイアを使用して大ヒットしたナンバーで、後にパクリが続出。製作はダンスマニア系でおなじみとなるスコーシオで、この曲以降同じ路線のナンバーが大量に作られました。
Kick Up The Volume/Rob Tissera
まさかの「XL Recordings」からリリースされたディスコということで話題になった一枚。やはり、リライト・マイ・ファイアをネタにした曲で、世界広しと言えども考えることは皆一緒ということでしょう。「XL」ということでブレイクビーツやハードトランスなリミックスもあります。
My Fire/X-Treme
こちらはダンスマニア系のディスコ・トラック。「DDR(ダンス・ダンス・レヴォリューション)」にも収録されたことがあるので、この中では一番知名度が高い曲だと思います。他にも「That’s The Way ’97」「September」「Wonderland」など、だいたいの曲はやらかしてるんじゃないでしょうか。
Find The Groove/Aquarius
大ヒットした「Inferno/Souvlaki」同様、ダン・ハートマンの「Relight My Fire」をネタにしたナンバー。「Inferno」よりもポップな印象のある軽快なノリが特徴で、よくメドレーでプレイされました。
We Can Make It/Aquarius
ディスコの女王として君臨したドナ・サマーの名曲「MacArthur Park」をネタにした原曲同様に超アッパーなナンバー。リリースされた頃にはもうトランスが人気になってきてネオ・ディスコ自体飽きられていたので埋もれてしまった残念な1曲。
Friction/Kornholio
ダン・ハートマンのインスタント・リプレイを用いたスコーシオ系列のナンバーで、ラップに「Tha Widlstyle/DJ Supreme」のサンプリングなどでおなじみの「The Badman Is Robbin/Hijack」を使うという気の狂ったパーティー・チューン。「頭悪いは最高の褒め言葉」がこれほど似合う曲もありません。
It’s Time To Party Now/Star System
ユーロビートでおなじみのイタリア「Time」のサブレーベル「Italian Style Production」からのナンバー。曲名通り「Ray Parker Jr. & Raydio」のヒット曲をネタにして、イタリア産らしいテクノ・ユーロダンスのエッセンスを加えたパワー・チューン。