ユーロダンス・コンピレーション・シリーズとして人気を博した「ダンスマニア」シリーズですが、本編以外にも様々なサブ・シリーズがあります。季節ものの「サマー・ウィンター」や当時人気だったマイアミ発のベースサウンドもの、クラブとのコラボレーションなどがリリースされています。
その中でも人気の高かったのが70~80年代中心のダンスクラシックを収録した「ダンスマニア・スーパークラシック」シリーズです。
以前はノンストップ仕様ではない通常の「ダンスマニア・クラシック」が発売されてましたが、こちらの「スーパークラシック」はダンスマニアのメインシリーズ同様ノンストップ版。
カイリー・ミノーグやマイケル・フォーチュナティなど、誰もが聞いたことのあるアーティストのサウンドを凝縮したわかりやすいディスコ・コンピレーションということで幅広い層に支持されました。
ノンストップ・ミックスも当時からディスコの DJ として活躍してきた重鎮・松本みつぐ氏を中心とした MST と、ディスコを知り尽くしたエンジニアが担当しているため、雰囲気もばっちり再現されています。
楽曲もミックスもすばらしいので、現在でも聞き続けているという人も多いこの CD をご紹介したいと思います。
ダンスマニア・スーパー・クラシック1
98年にサブ・シリーズとしてリリースされた「ダンスマニア・スーパー・クラシック」ですが、メジャーな曲・アーティスト中心でわかりやすい選曲になっています。
ノンストップ・ミックスの繋ぎも本編のような派手さはなく、いかにもディスコといった雰囲気があり、聞きやすいミックスです。ディスコものは原曲主義の人も多いですが、これならいいといって聞いている人もいました。
一方で、ディスコヒットをサンプリングしたネオディスコやヒップバッグといわれるジャンルがクラブでも人気で、当時の楽曲を知らない若者も「あ、聞いたことある!」ということがあります。ダンスマニア本編でもスコーシオ一派を中心としたディスコカバーものが人気です。
こういったこともあり、老若男女問わず聞けるコンピレーションとなっています。
収録曲
1:I Should Be So Lucky/Kylie Minogue
ご存じ、カイリー・ミノーグの代表曲ともいえる「ラッキー・ラブ」。ストック・エイトケン・ウォーターマンの PWL からリリースされ、世界中で大ヒットしたナンバーです。1999 年には元横浜マハラジャの DJ チーム「横田商会(Y & Co.)」による「I Should Be So Lucky (Y & Co. ’99 Edit)」がリリースされ、クラブでもよくプレイされました。
2:Turn It Into Love/Kylie Minogue
こちらもカイリー・ミノーグのヒット曲。アルバムからの日本限定カットで、WINK のカバーも相まって大ヒットします。この曲の人気を受け、U.K. でヘイゼル・ディーンによるカバーがリリースされることになりました(カイリーのがオリジナルですが、よく勘違いされる)。2000 年には「Night Of Fire/Niko」でおなじみのリミックスチーム「New Generation」による Re-EDIT がリリースされました。
3:Respectable/Mel & Kim
1986 年にデビュー曲「Showing Out」が注目され、翌年にリリースされ大ヒットしたナンバー。この曲もやはり PWL のストック・エイトケン・ウォーターマンによるプロデュースのナンバーで、U.K. チャート1位をはじめ各国でチャートインしています。
4:Upside Down/Coo Coo
やはりユーロビート界に欠かせないプロデューサーであり、現在でも活躍しているマウロ・ファリーナがプロデュースを務めたナンバー。当時から現在に至るまで、ディスコに必須の1枚でしょう。Y & Co. が REMIX した「Upside Down (Hyper Euro Mix)」も存在します。
5:Give Me Up/Michael Fortunati
ご存じ、ディスコに絶対必須なアーティストの一人であるマイケル・フォーチュナティの大ヒットナンバーでオリコン洋楽チャート4週連続1位を記録。Babe によるカバーも話題になりました。ディスコのみならず、邦楽でも長山洋子、中森明菜、元マハラジャ社長の成田勝、安良城紅、玉置成実、再結成も記憶に新しい W (ダブルユー)等、様々なアーティストによってカバーされている名曲です。
6:Into The Night/Michael Fortunati
同じくマイケル・フォーチュナティのヒットナンバーで、こちらもディスコに欠かせない1曲。特に元マハラジャ社長の成田勝のカバーの印象が強く、ディスコでもカバーバージョンを好んでプレイする DJ も多かったです。また、2018 年には全曲ディスコカバーの「ザ・ベスト・オブ・ディスコ・カバーズ」をリリースしています。
7:Eat You Up/Angie Gold
日本では荻野目洋子のカバーである「ダンシング・ヒーロー」があまりにも有名なアンジー・ゴールドのこの曲。話題となった大阪府立登美丘高等学校ダンス部の「バブリーダンス」でも使用されているほか、盆踊りでもカバーが使用されるなど今では身近なダンスミュージックとなっています。
収録CD(Amazon):The Best Of Angie Gold/Angie Gold
8:P-machinery/Propaganda
1983 年にデビューしたドイツ出身のエレクトリックバンド。Frankie Goes To Hollywood や Art Of Noise など人気バンドを次々と送り出した名門 ZTT レーベルからリリースされたこのナンバーもディスコでヒットした他、日産マーチのテレビ CM に使われるなど各方面で人気でした。
9:Relax/Frankie Goes To Hollywood
引き続き、前出の ZTT レーベルからリリースされた F.G.T.H. の特大ヒットナンバー。U.K. チャートを始め、ヨーロッパ各国で大ヒットし、続く「The Power Of Love」や「Two Tribes」も人気でした。
10:Future Brain/Den Harrow
1982 年に「To Meet Me」でデビュー後、コンスタントにヒット曲をリリースしてきたデン・ハロウ。1985 年にリリースされたこのナンバーは、イタリアを始めヨーロッパ各国でヒットした後、U.K. でもチャートイン。日本では 1986 年に U.S. 盤が入ってきてからディスコでプレイされるようになった通好みの1曲。
11:Long Train Lunnin’/The Doobie Brothers
1971 年のデビュー以降、再結成を経て、今なおシーンで活躍するアメリカのロックバンドであるドゥービー・ブラザーズ。1993 年にリリースされた Remix 盤がディスコ・クラブでも人気となり、特に U.K. 盤の「Long Train Runnin’ (Sure Is Pure 12″ Mix)」の人気が高かったです。
12:It Only Takes A Minute/Tavares
日本では「愛のディスコテック」の邦題でおなじみのタバレスのヒット曲。オリジナルは 1975 年のリリースですが、現在のディスコでよくプレイされているのは 1987 年にリリースされた Ben Liebrand による Remix である「It Only Takes A Minute(Extended Remix)」です。
13:Get Ready/Carol Hitchcook
オーストラリア出身のダンスポップ・シンガーであるキャロル・ヒッチコックのスマッシュヒット。プロデュースは数々のユーロビートヒットをチャートに送り込んだ PWL のストック・エイトケン・ウォーターマン。お得意のカバーソングで、このナンバーも 1966 年に「The Temptations」がヒットさせた曲のカバーです。
14:Fly To Me/Aleph
「Fire On The Moon」共々、こちらもディスコにおいてユーロビートで外すことのできない1曲でしょう。メンバーのデイヴ・ロジャースは 1990年に A-Beat C レーベルを立ち上げ、ヒット曲を量産。現在は新たに「DRM (Dave Rodgers Music)」を立ち上げ、今でもユーロビートを供給し続けています。そのデイヴのプロデュースで 1997 年に復活し「Let The Music Play」「Generation Of Love」をリリース。2019 年に再始動し、DRM やイタリアのディスコ・レーベル「Time Machine Productions」などから楽曲をリリースしています。
15:Two Tribes/Frankie Goes To Hollywood
「Relax」同様、ZTT レーベルから 1984 年にリリースされ、U.K. チャートを爆走したセカンドシングル。アメリカとソ連の冷戦を皮肉った楽曲で、レコードにもレーガン大統領とチェルネンコ書記長が描かれており、PV でも2人がリングで挑発しながら殴り合うという危険極まりない内容で話題となりました。
16:You Think You’re A Man/Divine
アメリカの俳優で巨体のドラァグ・クイーンというキャラクターで、映画「ピンク・フラミンゴ」はカルト的な人気を得ています。1981 年から歌手としてもデビュー。ボビー “O” のプロデュースで「Shoot Your Shot」「Native Love Step By Step」等をヒットさせ、1984 年にストック・エイトケン・ウォーターマンのプロデュースでこの曲をリリースし、日本でも話題となります。
17:Pistol In My Pocket/Lana Pellay
ラナ・ぺレーことアラン・ペレー(様々な呼び名がある)は LGBT の役者で、1986 年に PWL のエンジニアらによるプロデュースでディスコ・ディーヴァに転身。「Pistol In My Pocket」はオーストラリアで 17 位、ニュージーランドで 40 位のヒットとなりました。日本でもヒットし、これがあると「ディスコだな」と感じる1曲です。
18:Telephone Operator/Pete Shelly
セックス・ピストルズに影響を受けたパンクバンド「The Buzzcocks」のボーカル&ギターで、ソロデビュー後 1983 年にリリースした「XL·1」からのリードトラック。ロックファンのみならず、ディスコでも連日オンエアされていました。
19:Unexpected Lover/Lime
カナダのディスコ・ハイエナジーデュオであるライムは、デニス&デニースの夫婦によるユニットです。この曲は日本で「思いがけない恋」の邦題でおなじみで、U.K. ハイエナジーチャート1位を記録した他、アメリカのディスコチャートでも上位に食い込んだ名曲。プロもオンリーの日本語カバーも話題になりました。
20:Boom Boom/Paul Lekakis
俳優やモデルとしても活躍していたポール・レカキスのスマッシュ・ヒット。いろいろ裏話のある曲ですが、現在でもポールは楽曲をリリースし続けています。2001 年にはリミックスチーム B4 ZA BEAT による日本限定の Remix もリリースされました。
21:Meet My Friend/Eddy Huntington
86年に「U.S.S.R.」でデビュー後、「Up & Down」に続く「Meet My Friend」もヒットしたエディ・ハンティントン。前曲「Boom Boom」と同じプロデューサーによるナンバーで、日本でも大人気の1曲でした。2000年にこちらも B4 ZA BEAT によって Remix されています。
22:Ever And Ever/Venice
87年に「Hello D.J.」でデビュー後、Flea レーベルよりリリースされた「You Gave Me Love」が人気を呼んだヴェニス。日本ではこの「Ever And Ever」がユーロビートタイムのラストにプレイされることが多かった定番のナンバーです。
23:Boom Boom Dollar/King Kong & D.Jungle Girls
ディスコの盛り上がりに必須のブンブン・ダラー。やはり、この「Red Monster Remix」はマストでしょう。「DDR(ダンス・ダンス・レヴォリューション)」に収録されたことから、若い人にも認知度が高かったです。ハイスピード Remix「Boom Boom Dollar(K.O.G G3 Mix)」も若者に人気でした。
24:High Bright Night/Elisa Fiorillo
中原めいこが作曲、DJ チーム「M.I.D.」がアレンジした楽曲で、日本限定ナンバー。当時もよくプレイされましたが、現在ではこのレコードが海外のコレクターにも話題となっており、レアアイテムとして取引されています。
まとめ
前作のダンスマニア・クラシックスはオリジナルで収録されていますが、こちらの「スーパー・クラシックス」シリーズはノンストップ・ミックスということもあって、普段のリスニングのほか、ドライブなど様々なシーンで聞きやすい CD となっています。
繋ぎも最近のユーロビートミックスによくある叩きなど細工はなく、選曲など昔のディスコの雰囲気をしっかりと再現していて、とてもいい感じではないでしょうか。
最近、ディスコが各地で復活してきており、ふたたびディスコ旋風が巻き起こりそうな予感がします。その予習にもぴったりな CD ではないでしょうか。
気になる曲があったら、ぜひチェックしてみてください。